top of page

知らない おじさん

​闘うサラリーマンスノーボーダー

「俺のグラトリ祭りの開幕じゃい、とくとご覧あれ!」

みんながみんな楽しくスノーボードをしているわけではない。今回はスノーボードの闇に取り込まれたサラリーマンスノーボーダー、「知らないおじさん」に話を聞いた。

他人事ではない、業界関係者必見! 魂の一万字インタビュー!

​編集部(以下、編):

、、、、大丈夫ですか?

​・・・・・・・

​編:

すみません、、、、だ、大丈夫ですか?

​・・・・・・・

​・・・・・・・なに?

​編:

えーっと、、スノーボードを始められたきっかけというの

やってねーよそんなもん!!

やったことねーわ

​編:

そうでしたか。失礼しました。

​あの、、、なぜこちらに、、寝てらっしゃるんでしょう?

​・・・・・・・・・・・・・・

、、、、チュウシャ

​編:ん??すみません、なんですか?​

ちゅ・う・しゃ!!

​ちゅうしゃしようとしてんのっ!

​編:

ちゅ、ちゅうしゃですか??

​編:

・・・・・・・・・・・・

​編:

ああ!駐車!駐車ね!

駐車場に停めようとしてるわけですね! ご自身を!

​見りゃわかんだろ、、、しょーもない

​編:

・・・なるほど!

​お取り込み中申し訳ありませんが、・・・インタビューよろしいでしょうか

​・・・・ちょっとだけな。

​編:

ありがとうございます、、、

えー、先ほどスノーボードなんてやったことないとおっしゃってましたが、本当ですか?

​・・・・前やってたな、少し。

編:

・・・・・・

​それで、今は?

​もう辞めたよ。辞めた。

​編:

理由を聞いても、よろしいですか?​

・・・・・・

​あんた、家族いる?

​編:

・・・はい。妻と娘がおります。​

うちもな、娘いんのよ。高校生の。

その娘が中学生の時にネットかなんかで観たのか、グラトリかっこいいグラトリかっこいいって嫁と話してんのよ。

​俺、何のことか全然わかんなくてさ(笑)

​編:

はい。

​当時娘は思春期で俺とはほとんど喋ってくれなかったから、俺なりにグラトリとやらを調べてさ、どうやらスノーボードでそういうことやるらしいって知ったの。

でも俺は仕事の都合上、土日祝日は休みも取れねーし出張やら接待で全然スノボに連れてってやれなくてな、、、

​編:

日本のサラリーマンは忙しすぎますね、、、それで?

​ある時、取引先の偉い人とたまたまスノーボードの話になって、接待でスノーボードにお付合いすることになったわけ。

でまあ、ハマっちゃってさ(笑)冬が来ると何回も連れてってもらったよ。

娘も一緒に連れてってやりたいと思ったんだけどね。

接待についていくなんて嫌だろうと思って何も言えなかったな。

​つーかコミュニケーション自体取れなかったしね当時。

​編:

思春期の子供というのはなかなか難しいものがあるんですね。

俺が頼りないだけだよ(笑)

それでも、いつか家族でスキー場へ行った時に、少しでも俺の滑りを見せて娘を驚かせたいなって思って、結構頑張ったな。

先方の若い人たちにグラトリとか教えてもらってさ。

​途中からは家族をビックリさせたいって一心で頑張ってたような気もする。

​編:

なるほど。そういうスノーボードとの出会い方もあるんですね。

​それで、娘さんとは滑りに行けたんですか?

​・・・・・・・

その後俺も多少出世してさ、最近家族との時間も取れるようになってきたの。

​娘とも前に比べたらコミュニケーション取れるようになってきた気がしてて。

だから、この冬いよいよ雪山へ家族を連れて行こうって決めたんだ。

「俺のグラトリ祭りの開幕じゃい、とくとご覧あれ!」ってな感じよ。

​編:

いよいよ、練りに練りまくったグラトリを家族の前で披露する時が来たわけですね!

そういうことよ!

言ってやったよついに!

「よし!この冬はスノボにいくぞ!」って!

​編:

はい!それで娘の反応は!

『は?寒いしムリ』

​って、、、、、、、、、、、、

​編:・・・・・・・・

聞くよね。そりゃ。

「え、、、?あんなにグラトリグラトリって言ってたじゃん、、?」

​って。

​はい、そしたら娘の答えがこちら。

『うち好きなの「グラッドリー」だしウケる

「ぐら、、、っど、、りぃ、、??、、?

それ、、何、??」

え?競走馬』

​編:・・・・・・・・

この時の俺の気持ち分かる人、いないと思うよ地球上に。

​調べた。もちろん調べたよ。グラッドリー。

いた。確かにグラッドリー実在しました。

写真すらない繁殖牝馬。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

​そして思いました。

娘、渋すぎるよ〜、ここいくかぁ〜って

​で、今こうなってるわけ。

うん。

​だから、少しそっとしといて、、、

スノーボードの闇に取り込まれてしまった名もなきおじさん。

その後、おじさんがスノーボードを続けたのかはわからないが、

おじさんの幸せを祈らずにはいられない。

そして、決してこれは他人事ではないのだ。

​2016年某日

bottom of page