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CDTV

「カウントダウンTVをご覧の皆さん、こんばんわ」

このセリフを耳にしたことがある方は多いのではないだろうか?

某テレビ局で深夜に放送されている音楽番組で、ゲストのミュージシャンが歌う前に楽屋のようなところでカメラに向かって曲紹介をするのだが、その時このセリフはお決まりのようになっていて、出演者はみんな口にするのだ。

もはやこのセリフは伝統のようなものになっているのだろうか。

そして、このセリフをカメラに向かって言えるようになることが、ミュージシャンとしてひとつのステータスでもあるのかもしれない。

今回、焦点を当てたいのは、このセリフを言った後の曲紹介での「ミュージシャンの態度」についてだ。

パターンはだいたい3つに分かれる。

①淡々と曲を紹介する

②元気いっぱいに曲を紹介する

③気だるそうに曲を紹介する

①淡々と曲を紹介する

このパターンはすでにある程度の知名度と地位を確立して、この番組にも何度か出演しているミュージシャンやバンドに多く見られる。

特にキャラを立てようとすることもなく、純粋に「曲を聴いてほしい」というスタンスからか、非常に自然体に近いように見える。

②元気いっぱいに曲を紹介する

このパターンは圧倒的にアイドルに多い。

元気いっぱい、いつも笑顔のキャラクターを前面に押し出してくる。

リーダー的人物「カウントダウンTVをご覧の皆様、こんばんわ!」

全員「◯◯(チーム名)でぇ〜す!!!イェ〜〜!!」(チーム名を言う前にアイドル特有のクダリが入る場合もある)

リーダー的人物が曲紹介。その間、他のメンバーは笑顔で頷いたりする。

リーダー「それでは聞いてください!!」

全員「(せーの)どうぞ〜〜!!」

​この流れが一般的である。

そして筆者が今回最も焦点を当てたいのがこのパターン③だ。

③気だるそうに曲を紹介する

​このパターンを用いてくるのはほぼ100%ロックバンドである。

基本的にボーカルのみが喋るのだが、声は寝起きなのかと疑うほど小さい

ボーカルが喋っている間、後ろのメンバーは足を組んでうつむいているか、サングラスをかけていてどこを見ているか判断できないことが多い。

(だいたいベースとドラムである)

あと、革ジャンを着ている。

後ろのメンバーは最後までカメラのほうを見ることもなく、曲へと入っていく。

​砕けた言い方をすると非常に「ぶっきらぼう」なのだ。

​あと、先の尖ったブーツを履いている。

筆者はこのパターン③が断固気に入らない。

確かにロックといえば硬派無骨なイメージはある。

そういったキャラ作りも必要なのかもしれないし、「口で説明するより、聴けばわかる」的な意志の表れや、「俺らの仕事は喋ることじゃねぇ、ロックンロールだ」との想いもあるのだろう。

しかし、筆者は言いたい。

「じゃー出てくんなよ」 と。

大相撲の勝利者インタビューでの力士は、基本的にハアハア言いながら体格と反比例するかのようなか細い声で喋る

態度が悪いわけではないが、こちらもぶっきらぼうには感じる。

​しかし「力士のインタビュー」「ロックンローラーの曲紹介」には決定的な違いがある。

それは「宣伝要素があるかないか」だ。

力士は取り組みの感想を求められ答えているだけだが、

ロックンローラーはその曲を知ってもらいたい買ってもらいたいという願望が根底にあり、カウントダウンTVに出ている。

テレビに出演しお金をもらい、自分たちの曲を「聴いてください」と言うからにはそれなりの態度があるのではないか。

「俺たち硬派で無骨でクールなんで」というキャラで通したいのであれば、CGのMCキャラクターが顔面クルクル回転しながら甲高い声『カウントオ〜、ダゥンッ!!』などと叫ぶポップにポップをコーティングしたような番組に出ていること自体が矛盾している。

このような番組でキャラを通して良いのは、キャラクターが完全に確立されている大御所バンドと内田裕也氏のみである。

と、かなり辛辣な意見を述べてきたが、実はこういった問題はスノーボード業界にも言えることだ。

スポンサーが付いているスノーボーダーを業界では「ライダー」と呼ぶが、ライダーの主な仕事はそのスポンサー企業を宣伝することにある。

ユーザーにメーカーや企業を知ってほしい買ってほしい

​まさにカウントダウンTVに出ているロックバンドと同じである。

イベントなどでライダー達がお客さんの前に並んで自己紹介と一言挨拶する、といったシチュエーションはよくあるが、だいたい言うことは「私もとても楽しみです」「一緒に楽しみましょう」「怪我のないように楽しみましょう」など、押し並べたように同じセリフで、聞いているほうは後半飽き飽きしてくる。

ロックンローラーのような態度のライダーこそいないが、筆者はたまにこの光景を見るとなぜかカウントダウンTVを連想してしまうのだ。

「俺らの仕事は喋ることじゃねぇ、ロックンロールだ」とロックバンドが言ったら、

「俺らの仕事は喋ることじゃねぇ、滑ることだ」とライダーも言っていいのだろうか。

スノーボードのイベントに千編一律の形式的な挨拶など時間の無駄だ。

​滑りだけではなく喋りのスキルも上げてもらいたいものである。

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