日本のプロに足りないもの
誰しも渾身のトリックを炸裂させた時、己の内から溢れ出す感情を雄叫びにしたり、体全体で喜びを表現することだろう。
腕を突き上げガッツポーズ、言葉にならない雄叫びを声高らかに叫ぶはずだ。
例えばそれが「ここ一番」の勝負所であったりした場合、その喜びはなおさらではないだろうか。
そんなスノーボーダーの姿は見る者の感情をも揺さぶり、感動を与えてくれる。
スノーボードがアメリカから日本に伝わり数十年、今ではそんな感動を与えてくれる日本人ライダーがたくさんいる。
こんなに素晴らしいことはない。
日本のスノーボードは間違いなく世界トップクラスだ。
だからこそ。
世界と競えるほどになったからこそ、今一度スノーボードを日本人目線で見つめ直すべきではないだろうか。
日本人の感性でスノーボードを見つめ直した時、真っ先に違和感を感じるのが、
冒頭に触れた
「雄叫びガッツポーズ」についてだ。
日本の武道では相手に勝った時や素晴らしい技を決めた時こそ、相手を敬い自分を律することが美徳とされている。
相撲、柔道、剣道、空手など、日本の武道では「雄叫びガッツポーズ」はご法度だ。
相撲で第68代横綱・朝青龍が取り組み後に見せたガッツポーズで物議を醸したのは記憶に新しい。
これは単に体や技を鍛え勝敗を決するものではなく、礼儀作法を通して「人間を育てる」という側面が武道にはあるからだろう。
この美徳精神をスノーボードにも適用することによって日本のスノーボードは新たな進化を遂げるのではないだろうか。
「スノーボードはアメリカ発祥だから」と一笑に付してしまうのは簡単な話だが、トリックの進化が目覚ましい昨今、いつまでもアメリカの真似ばかりしていては日本のスノーボードシーンがさらなる高みへ到達するのは困難だろう。
とは言え、スノーボードの爽快感や達成感から湧き出る喜びを抑え込むのは難しい。
そこで、以下に見せる日本の良き文化を教材として、ぜひともお手本としてほしい。
子供から大人まで楽しめる「将棋」
日本発祥のものではないが、伝来以来日本独自の進化を遂げてきた文化である。
将棋にもプロ制度があり、トッププロ棋士になれば数千万円の年収を得ることもできるため、プロ同士の対局は命を削った「盤上の格闘技」とも言われる。
そんな人生を賭けた戦いで、勝利を手にできればガッツポーズで「よっしゃー!!」と叫びたくなるところなのだが、、、、、
この対局をご覧いただこう。
対局終盤の大事な場面。
持ち時間もなくなりお互いに苦しい時間帯だ。
ここで動きが!
筆者も将棋は詳しくないので今の一手が一体どんなものなのか計りかねるが、左の棋士は驚きの表情、右の騎士は困惑の表情を浮かべているようにも見える。
一体どちらが優勢なのか素人には判別できないが、いずれにせよ先ほどの一手は勝敗を左右する重大な一手だったようだ。
その後も少し対局は続き、、、、、
いよいよ勝敗が決する時は近いようだ、、、
はたしてこの激戦を制するのは、、、
「勝利の雄叫び」を上げるのはどちらの棋士なのか、、!
勝負がついたようだ!!
さあ!!「雄叫び」を上げるのは、、、、、
どっちだ!!! !
、、、、、、、、、、
、、、、、、、、、、
、、、、、、、、、、
、、、、、、、、、、
、、、、、、、、、、
あ、、、、、
・・・・・・・・。
テロップがなかったら一体どちらが勝ったのかもわからないが、
将棋の世界では勝者が
「ぃやったぁぁ〜!!!フォ〜〜!!」などと勝利の雄叫びをあげることはない。
「己を律し相手を敬う」
これぞ日本の美徳なのだ。
動画で観ると、あの一手は解説の人も大興奮するほどの会心の一手だったようで、ようはものすごく「気持ちいい勝ち方」だったというのがわかる。
おそらく勝者はアドレナリン、その他脳内物質出まくりだったはず。
それでも己を制御できる、、、
これが「プロ」たる所以なのかもしれない。
日本のトップボーダー達もこの日本の精神に学んではどうだろうか。
ビッグコンテストで観客の度肝を抜く会心のトリックを炸裂させ、、、
ガッツポーズもなく、首をかしげながらお辞儀をして帰っていく、、、
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すっごい地味である。